【看護師】大矢
私はこの生まれ育った町で、訪問看護師として働けていることを誇りに思います。学生時代は、地域の方々にご心配やご迷惑をおかけしたこともありました。だからこそ今、地元で暮らす方々の生活を支える仕事ができていることに、強い想いと責任を感じています。看護師としてのスタートは、消化器外科を中心に、小児科や形成外科を含む急性期病棟でした。日々、手術や治療に追われる中で、目の前の命を救う看護に全力で向き合ってきました。
一方で、次第に大きな葛藤を抱くようになりました。それは「退院後の生活が見えないまま患者さんが家に帰り、結果としてすぐに再入院になってしまうこと」、そして「最期の時間」でした。ちょうどコロナ禍と重なり、面会制限によりご家族に会えないまま亡くなられる方、最期に間に合っても会話ができない状態での面会。その状況を“仕方がない”と割り切ることが、私にはどうしてもできませんでした。「ご家族と話せる状態で会えていたら」「もっとその人らしい時間を過ごせていたら」そんな思いが心に残り続けていました。
もともと学生時代から在宅看護には興味がありましたが、病棟での経験を通して、その想いは確信へと変わっていきました。病院では、どうしても医療が中心になります。点滴や内服を「したくない」と訴えても、治療が優先される場面も少なくありません。ですが、在宅看護は違います。ご利用者の思いが一番にあり、その一言で治療や関わり方が変わる。その価値観に、私は強く共感しました。
決定的だったのは、在宅看護のオンラインセミナーでした。「人生の最期を、自分の思いで生活していい」。飲酒や喫煙でさえも、その人の人生として尊重されるという考え方は衝撃的で、同時に自分の看護観そのものでした。その瞬間、迷いなく在宅看護への転職を決意しました。
実際に在宅の現場に立って感じるのは、信頼関係の深さです。ご利用者だけでなく、ご家族の笑顔を見ることができること。最期の場面で、医療者とご家族が同じ方向を向き「やりきれた」と感じられる時間を共有できること。訪問時に「大矢さん」と笑顔で迎えていただけることや、緊急対応の後に「前回はあなたのおかげで助かったよ」と声をかけていただけることは、何にも代えがたい喜びです。病棟で築く信頼関係も大切でしたが、在宅看護での関係性は、それ以上に深く、温かいものだと感じています。ご利用者だけでなく、ご家族の人生にも関わらせていただいている実感があります。
生まれ育ったこの町で、これまで支えてくださった先人の方々に恩返しができるよう、一人ひとりの「その人らしい暮らし」と「最期の時間」を大切に、訪問看護に取り組んで参ります。
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